
JOURNAL · 書家に聞く
五体入門——篆書・隷書・楷書・行書・草書
漢字には五つの書体があります。最古の篆書から、楷・行・草まで。意外に知られていない「生まれた順番」もあわせて、三代目がやさしく。
漢字には、五つの書体——「五体」があります。篆書(てんしょ)・隷書(れいしょ)・楷書(かいしょ)・行書(ぎょうしょ)・草書(そうしょ)。まずは、一番古い篆書から見ていきましょう。
篆書——もっとも古く、象形の面影を残す
篆書は、五体のなかで最も古い書体です。先にお話しした“絵のような”記号的な文字も、大きくは篆書の仲間。その完成形が、秦の始皇帝が統一した「小篆(しょうてん)」です。さらにさかのぼれば、甲骨文字や、青銅器に鋳造された「金文(きんぶん)」もあります。ひと言でいえば、最も古く、象形の面影が色濃く残る書体です。
やがて隷書の時代になると、篆書は日常では使われなくなります。けれど、その荘厳さは失われませんでした。石碑の題字=「篆額(てんがく)」に、そして印の世界=「篆刻(てんこく)」に。公的で神秘的な場面にこそ、篆書は今も生き続けています。
楷・行・草——そして「意外な順番」
一言でいえば、こうです。
- 楷書:いま使われる正式な書体。一点一画がはっきりして、角張っている。
- 行書:楷書を少しくずしたもの。
- 草書:さらに簡略化し、続けて書いたもの。
私たちは楷書を基本に学ぶので、「楷書をくずして行書・草書になる」と感じます。ところが歴史は逆。行書・草書のほうが、楷書より先に生まれています。もとは一つ前の隷書を省略し、速く書くうちに、まず草書が、次いで行書が生まれました。楷書は、最後に整えられた書体なのです。意外と知られていない話です。
どの書体を選ぶか
作品では、用途や込めたい雰囲気に合わせて書体を選びます。荘厳さや格式には篆書・隷書、明快さには楷書、やわらかな動きには行書・草書。この一枚にどの書体がふさわしいか——相談は、いつもそこから始まります。
書体の世界は、知るほどに奥深いもの。作品のご依頼や書道体験のご相談は、いつでもこちらへ。